新型コロナウイルス情報
飲み薬の情報
2022年1月17日記載
新型コロナウイルスに対する経口の抗ウイルス薬
「ラゲブリオ」についてご報告します。
特例承認とは、健康被害の拡大を防ぐために、
他国で販売されている日本国内未承認の新薬を、
通常よりも簡略化された手続きで承認し使用を認めることです。
ラゲブリオは米メルク社(MSD)が開発した飲み薬で、
新型コロナウイルスの経口薬としては、
国内初承認ということになります。
海外では11月4日に英国で世界初承認され、
12月23日に米国でEUA(緊急使用許可)を受けています。
一般名を「モルヌピラビル」といいい、
生体内で加水分解されて生じた活性代謝物が、
SARS-CoV-2のRNA依存性RNAポリメラーゼの基質となり、
ウイルス複製を阻害するというのが薬理作用です。
対象となるのは18歳以上のコロナ感染者ですが、
現時点で国内での対象者は、「重症化リスク因子」を有する
「軽症~中等症Ⅰ」の感染者となっております。
気になる効果の方ですが、
入院又は死亡に至った被験者の割合は、
本剤群で7.3%でプラセボ群の14.1%と比較して6.8%低く、
リスク減少率は48%で統計学的に有意な差が認められたとのことです。
また、全ての被験者を対象とした解析においては、
入院又は死亡に至った被験者の割合は、本剤群で6.8%であり、
プラセボ群の9.7%と比較して3.0%低く、
リスク減少率としては30%とされています。
実は治験の最終結果で入院、死亡を抑える有効性が
当初見込んだ50%から30%に下方修正されており、
本当に有効なのかはっきりしないところもあります。
フランスでは治験で期待した効果が得られなかったため、
モルヌピラビルの発注を取り消したととのことです。
従ってこれから日本国内の実臨床で使用され、
どれだけの効果があるのか検証されるものと思われます。
因みに今般猛威を振るているオミクロン株への効果ですが、
製造販売業者によると、in vitro(試験管内)での検討において、
アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、ラムダ株、
ミュー株、オミクロン株に対して、野生株と同程度の抗ウイルス活性が
認められていることが確認されているそうです。
投与に当たっては保健所の指示を待つ必要はなく、
添付文書等を確認の上、医師が必要性を認めた場合には、
速やかに投与いただいても差し支えないとのことです。
このお薬は症状が発現してから
速やかに投与を開始する必要があります。
臨床試験においては
症状発現から6日目以降に投与を開始した患者における
有効性を裏付けるデータは得られていないとのことです。
従って対象となる患者様が出た時には、
その場で説明し処方箋を発行す対応が必要になります。
手続きも普段の処方よりも煩雑になるので、
医療機関でも薬局でも、
慣れるまでは混乱があるかもしれませんね。
当院は先日「ラゲブリオ登録センター」への登録を行い、
現在処方に向けて手続きを進めております。
もうしばらくで使用できるようなると思われます。
また厚労省は先日、
現在使用されている注射薬の中和抗体薬ロナプリーブは
オミクロン株に対する中和活性が低下するとのことで
オミクロン株感染者への投与を推奨されないとしています。
となるとオミクロン株が大半を占める第6波では、
このラゲブリオがどれだけの効果を発揮するのか、
たいへん重要な役割を担っていると思います。
以上現時点での状況をまとめてみました。
当院も限られた医療資源で、
この第6波にどこまで対応できるかわかりませんが、
何とかやれることはやっていこうと思っております。
皆様も感染力の非常に強いオミクロン株、
十分にご注意くださいませ。
吉岡医院 吉岡幹博さまからの抜粋